NAIST受験記2020(2021年春入学・1回目)

本記事は1年前の情報です

(2021年7月21日に追記)この記事は2021年度・春入学の受験記です.既に2022年度・春入学の第一回入試は終了しており,この記事も1年前の古い情報になりました.NAISTの入試形式が変わらない限りは本記事の情報も生き続けますが,基本的には最新の情報を見るのがベターです.そこで,以下に2022年度入学の受験者が新たに書いてくれた記事を列挙しておきますので,まずはそちらを見ることをお勧めします.この一年間,本記事は2000回以上クリックされており,実際に20人以上の方から連絡をいただきました.何かの役に立てていれば嬉しく思います.引き続き,本記事もよろしくお願いします.

受験記

NAIST受験記 2022年春入学(第1回) | MASAPAGE

NAIST情報科学領域合格体験記(2022年度春入学第1回)|駄文駄文ぴじょん|note

NAIST合格体験記2021(2022春学期第一回)|だぶ|note

NAIST受験記2022①<対策編>|Yuki Yamaoka|note

最強のNAIST情報科学領域合格体験記【2022年度春入学第1回】|Shota Ozaki Org

小論文

GitHub - mlieynua/naist_essay: NAISTの入試で提出した小論文

naist_essay/NAIST_essay.pdf at main · dovedovepigeon/naist_essay · GitHub

はじめに

本記事は,NAIST博士前期課程2021年度春学期入学・第1回目入試の受験記です.情報科学領域志望です.僕自身,他の方の受験記をかなり参考にさせていただいたので,今後受験される方の一助になればと思って書くことにしました.

今回の入試はコロナの影響でオンライン形式となりました.よって,本記事に受験地の様子や前泊に関する記述はありません.

忙しい方へ3行で

  • 結果:TOEIC 525点,数学1完,面接はほとんど詰まらずで合格
  • 対策:数学はマセマ,小論文は約2週間前から準備,面接は自問自答してイメトレ
  • 試験内容:数学は解析が易,代数が難(個人の感想です),面接は専門的なことをだいぶ聞かれた

目次

対策編

GPA

(GPAの項目は2021/5/25に追記されました) 入試の項目には書類審査が50点分もあります.小論文は90点のほうに行くこともあり,書類審査では主に学部の成績が見られているのかなあと勝手に思っているので,GPAを書いておきます.僕は甲南大学出身で,出願時まで(3年次まで)の平均GPAが約3.5でした(最大値が4.0).他にも何かしらで見られている要素があるのかもしれませんが,参考程度ということで.

研究室の調査と決定

希望研究室の調査は重要です.NAISTの面接は,出願時に希望した研究室の先生が行います.よって,希望研究室の研究内容と自分のしたい研究内容がマッチするかという点は,よく把握するように努めました.具体的には,先生に自分の研究したいことを相談したり,研究室の過去の論文を見たりしました.

相談の機会としては,3月と5月のオープンキャンパスを利用しました.3月のものは現地開催で,興味のある研究室を中心に訪問しました.ただし,第1希望の研究室は教授が変わる関係で動いていないようだったので,訪問できませんでした.5月のものはオンライン開催で,第1希望の研究室の先生と話すことができました.研究したい分野を伝えて,入学後も取り組めそうか確かめました.

小論文

小論文は出願の2週間くらい前から書き始めました.小論文では,

  • これまでの修学内容

  • 入学後に取り組みたい研究内容

の2点を,A4 2ページに収める必要があります.今回は前者を1/4ページ,後者を残り7/4ページという配分で書きました.卒業研究の進捗があまりないため前者に書くことがなく,記述量が偏りました.

また,記述内容として,修学内容には

  • 今の専門分野に興味を持ったきっかけ

  • 既に学会発表した研究の簡単な内容

  • 卒業研究の簡単な内容

を書いて,入学後の研究内容には

  • 先行研究の紹介,近年の動向など

  • 上記の動向を踏まえた上での課題設定

  • 課題を解決するためのざっくりした研究計画

を書きました.研究内容については,一般的な論文の流れそのものだと思います.ただし,小論文の採点者が自分と同じ専門分野の人だとは言い切れないため,分野に精通していない人でも通じるような内容を心がけました.これは近年の動向の記述を増やすことで実現できると思います.

小論文はそもそもテーマ決めに苦労するんですが,卒論のテーマが良い感じの人はそれを拡張する形で書けば良いと思います.「今卒論としてこういうことをやっていて,その続きで修士もやりたい」というのはある意味王道で,説得力があります.一方,NAIST修士から分野が変わるような人も歓迎するみたいな雰囲気が強いと思うので,思い切って卒論とは全く異なるテーマを採用するのもアリです.ただしその場合は「修士からその研究をやりたいと思っているのに,なぜ今,卒論としては別のことをやっているのか」という問いに明確に答えられる必要があると思います(今配属済みの研究室が分野違いなので...という話になることが多そうですが).筆者の話をすると,僕は卒論と同じ分野ですがテーマとしては異なるものを採用しました.テーマを決めるにあたっては学部の研究室の先生に相談しようかとも思いましたが,結局他人から与えられたテーマには情熱を持てない気がしたため,自分で一から考えたものを採用しました(精神論っぽいのですが,やはりその研究をどれくらい考え抜けるかに関わってくると思います).

添削は学部の研究室の先生にしていただきました(希望研究室の修士や博士の人にも頼もうかと思いましたが,コメントもらって修正するまでの時間が微妙になかったのでしなかった).

NAISTの小論文は公開されている方もいます.他の方の受験記ブログや,GitHubで「NAIST」で検索するといくつか見つかります.僕の小論文も新規性がなくなったと判断すれば一般公開するつもりです.(でも,TwitterにDMをいただければお送りいたします)

ごつちやん (@gotutiyan_kapi) | Twitter

面接

とにかくイメトレしました.お風呂に浸かりながら,自分が試験官になったつもりでひたすら自問していました.やればやるほど,自分の知識の穴が見つかります.その穴を文献を読んで埋めることの繰り返しです.

主な内容は,

  • 提案手法のメリットとデメリット説明できる?

  • 引用している文献の内容は簡単に説明できる?

  • (国際会議で行われたコンペの話を書いていたので)そのコンペの上位システムの手法は?コンペで提供されたコーパスと,その簡単な特徴は?

  • 卒業研究で対象としている課題は説明できる?大まかなアプローチが決まっていればその簡単な説明もできる?

  • なぜNAISTを目指すのか?お前が研究したい分野で有名な研究室は他の大学にもあるぞ?なぜ自大の院には進まない?

  • 卒業後の進路どうするの?

などなどです.ひたすら自問自答しました.

また,例年の面接では,最初に小論文を3分でプレゼンする試問がありましたが,オンライン面接では行わないと明記されていました.とはいえ,自分の小論文の要点を簡潔に話せることはとても重要だと考えて,3分で話す練習もしていました.多分,どこかで役に立ったのだと思います.

英語

TOEICのスコアで出しました.そこまで英語が得意ではないのと,コロナの影響で続々と試験が中止になったことから,2019/12月時点の成績だった525点で出しました.

他の方の受験記ブログを見ると,なんだかんだで600点を超えている人が多く,客観的には少し不安な点数だったかもしれません(合格者平均も670点程度.公式QAより).一方で,出願直前期のTOEICたちが続々と中止になっていたことから,その時期で追い込む予定だった受験者の点は伸びていないと予想し,楽観的でした.

数学

数学の出題範囲は教科書で指定されています.教科書で勉強するつもりはありませんでしたが,範囲の確認は行わないといけないので,以下のリンクから目次だけ確認しました.

範囲がわかれば勉強するしかありません.他の方の受験記では揃ってマセマを使っていたので,僕も微積線形代数のマセマを買ってきてやりました.ただ,微積のマセマはsin^{-1}などの三角関数逆関数を含む問題が多く,NAISTの傾向とは合わないように思いました.NAIST三角関数逆関数が出た例は見たことがないです.(出ないことを保証する記述ではないです.)

過去問もそれなりに公開している人がいるので,見つけ次第全て解きました. 例えば,以下のリポジトリは問題の年代こそ古い(~2012年)ですが,力試しにはちょうど良いと思います.確率統計の問題もありますが,今は出ないので無視してOKです.

GitHub - tubutubucorn/naist-exam

さらに,数学の問題を載せているブログでいうと

2019年NAIST受験記(情報科学専攻) - うしのおちちの備忘録

https://sumansonian.com/naist-exam-graduate-school/

院試受験記 (NAIST) - S 研究室

NAISTを受験した話 | MATHFREAK

あたりが見つかります.見つけた問題は片っ端から解きました.

もっと問題に触れたい場合は,色々な大学の院試過去問を漁るのも良いかもしれません.

試験日当日編

入試はWeb会議システムWebexで実施されました.事前に受験票と一緒に入室時刻が記載された紙も届くので,指定の時間に入室します.入室後は,注意事項の確認と,受験番号を聞かれるなどの簡単な質問がありました.専願か併願かも聞かれました.それから15分程度待った後に,数学の試験が始まりました.

数学

従来の数学の試験は,4問中2問を選ぶ形式で,10分間の下見,10分間の解答です.一方で,オンライン試験における数学は,2問出題で,下見なし,10分間の解答です.つまり,どの問題を解くか選ぶ必要がない代わりに,問題を見た瞬間に説明を始めないといけませんでした.説明できる時間はあくまで10分と変わりなしなので,ほとんど制限時間が半分になったようなものです.このような背景から,個人的には問題はそれなりに易化すると思っていました.しかし実際には,従来とほとんど変わらない難易度の問題のように思いました.(自分が解けなかった問題は難しく見える・難しいと思いたい,というバイアスがかかっているかもしれません.)

結果としては,解析は完答,代数は口頭で解法を伝えるにとどまりました.

僕が解いた問題はその著作権を考慮し,正確な数字を載せることは避けます(問題に著作権があるのかどうか分かりませんが...).小論文と同様,DMをいただけると個人的な範囲で共有いたします.

  • 解析

    小問集合でした.1問目で単に三角関数の絶対値の積分をさせて,2問目で三角関数のグラフが絡む領域の面積を求めさせる問題でした.こういうのは2問目の計算に1問目の結果を使うはずですが,繋がりが分からなかったので気にせず解いてしまいました.

  • 代数

    問題文が長くて詳細を覚えてないです.長いので,貴重な10分の一部を読むのに取られて大変でした.なんか線型独立なベクトルが3つあって,そのうち2つを足し引きして新たなベクトルを3つ作ります.このとき,新たなベクトルはなんと線型従属だというんですね.これを証明する感じでした.加えて,独立と従属を入れ替えたバージョンも証明しろという内容です.

知り合いにもう一人受験した人がいたので問題を聞くと,

  • 解析: n^{3}e^{-n}の無限級数に関する問題

  • 代数:正方行列A,Bがあるとき, ABBAのトレース(対角成分の和)に関する問題

だったそうです(著作権に配慮して表現を調整しています).

面接

数学の試験を終えると,2,3分開けて面接が始まります.試験官は3人で,希望研究室の先生が中央にいらっしゃいました.基本的に,希望研究室の先生が小論文を中心とした専門的なことを聞いて,左右の先生が,志望動機に関わることや,卒業研究についてざっくり聞いてくる感じでした.

質問の内容は大体以下の通りです(もちろん,本当はもっと丁寧な表現で質問してくださっています).

  • 提案手法に関する専門的な質問

  • 専願ということだけど,自大の院には進まないの?

  • 修士卒業後のキャリアはどう考えてる?

  • 卒業研究はどんなことをしてるの?

  • プログラミング言語は何が打てる?どんなものを実装した?

専門的な内容では,小論文の手法についてしっかり議論する感じでした.個人的にはオーバーフォッティングやスケーリングというような英語的な表現に馴染みがなかったので,その表現で質問された時に焦りました.また,聞いたことあるけど仕組み知らない系の用語が絡む質問があり,素直に「深く知らないので答えられません」という回答をしました.分からない質問に対しての回答は,「分からないことを分かっている」アピールをするとポジティブに捉えて,素直に分かりませんと言おうと決めていました.

また,面接で最も注意したのは,「聞かれていることを正確に把握すること」です.何を聞かれているか理解して,ねじれのない回答をするように努めました.希望研究室の先生が直接面接する意味を考えると,「ちゃんと話できて,研究の議論できます!」とアピールすべきだと考えたからです.

合格発表

PDFを開く勇気が必要でした.思い切って開くと自分の番号が書いてありました.

格通知メールが来るとか来ないとかの話が毎年どこからか出ますが,少なくとも情報科学領域は来ません.バイオか物質のどちらかであれば,合格者ガイダンスなどあるようなので,その日程の通知を兼ねて送られる可能性はあると思います.仮に来てもそれはそれで問題ないので良いとして,来ないことに関しても問題ないことを明記しておきます.

2週間くらいで通知の封筒が来ました(お盆挟んだので,本当はもうちょっと早いんだと思います).これで本当に,合格したことを実感できます.

点数

(点数の項目は2021/5/25に追記されました) 点数開示をしまして,満点200点,合格最低点134点,僕の点数が138点とのことでした.科目ごとの点は分かりませんが,結構ギリギリだったようです.推測するとすれば,英語10点(満点30),数学20点(満点30),書類審査40点(満点50),小論文・面接68点(満点90)くらいなのではないでしょうか.

おわりに

NAIST受験に関する一連の流れについて記しました.小論文や面接対策として,提案手法について本当に色々なことを考えました.よく考えたことで合格につながったのはもちろん嬉しいですし,個人的に研究に対する思考力が上がったような気がして,受験することを通して成長できたような気がします.

受験を終えてひと段落ですが,今からが本番ですよね.

何かご質問などあれば,この記事のコメントか,twitterの@gotutiyan_kapi までDMなどいただければ回答いたします..

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