ポエム:発表練習は3回くらいがちょうどいい

NAIST Advent Calendar 2022の7日目が空いていたので書きました.

スライドを使った口頭発表の練習は,3回くらいがちょうどいい.それより少ないと,「つなぎ」の発話がうまくできない.それより多いと,口が慣れ過ぎてしまう.

発表練習が少ないと,「つなぎ」の発話がうまくできない.いつもスライドの移り変わりの「つなぎ」になる部分の発話を意識している.スライドという発表形式は,内容こそ連続的であるが,視覚的には離散的である.N枚目とN+1枚目のスライドが視覚的に高くオーバーラップすることはあまりなく,視聴者からすると一瞬で内容が切り替わる(例え内容が連続であっても,少なくとも視覚的には変わる).発表者ができることは,その切り替わりができるだけ滑らかになるように,適切に「つなぎ」の言葉を入れることである.例えば,先行研究のスライドから問題点のスライドに切り替わる時に,「以上のような先行研究があるんですが,実は問題があります.」といった具合である.これにより,N枚目とN+1枚目のスライドの繋がりが分かりやすくなり,発表が聞きやすくなる(と思っている).もちろんスライドの作り方を工夫することでこんなことは考えなくても良いのかもしれないが,口頭でもサポートできるに越したことはない.発表練習が少ないと,この適切な「つなぎ」を上手く入れることができない.この原因は,発表者の視点に立った時,クリックもしくは矢印キーを押すことで,スライドがどのように変化するかを把握できてないことにある.スライドを切り替える時,切り替える直前に切り替えた後の様子が想像できないと適切な「つなぎ」は発話できない.スライドの順番を全て覚えろという主張ではない.でも,ある程度の流れは発表の途中でも予測しながら発表するべきである.このことは,発表に余裕が生まれるという副次的な利点にもつながる.これを達成するためには,発表練習はある程度必要である.

ただし,練習しすぎるのもダメである.練習しすぎると口が慣れ過ぎてしまう.口が慣れ過ぎると,次に何を話すかを決めるのが極めて容易になり,言葉の切れ目がなくなっていく.極端な話,原稿を丸覚えするような感じになる(原稿を作っていなかったとしても).やはり,覚えていることを単に口に出すよりは,覚える分量を減らし,代わりに言葉を逐次的に構築していく方がいい.この時に言い淀みや数秒の考える時間があっても構わない.個人的にはそうやって話してくれる方が好きである.また,口が慣れ過ぎると,「予定」とは違うことを話してしまった瞬間に崩れてしまう.練習すればするほど,あるスライドのある部分において自分が話す言葉は確立していき,固定化されていく.この固定化された言葉が「予定」である.そのような状態で「予定」とは異なることを万が一言ってしまうと,その場で少なからず混乱する.ここからの立て直しは多分難しい(し,立て直すような状況になりたくない).練習はしすぎるのもダメである.

やっぱり,発表練習は3回くらいがちょうどいい.